過度な食事制限は何がヤバいのか?

運動

――「痩せたい」の裏に潜むダイエットの落とし穴――

「できるだけ早く痩せたい」「食べなければ体重は落ちるはず」。こうした考えから、食事量を極端に減らすダイエットを選ぶ人は少なくありません。特に若い女性の間では、運動よりも食事制限に頼ったダイエットが一般的になっている現状があります。しかし、その方法は本当に安全なのでしょうか。本記事では、過度な食事制限がもたらすリスクと、健康的に体を整えるための正しいダイエットの考え方について詳しく解説します。

ほとんどの人が経験している「危ないダイエット」

女子大学生を対象に行われたアンケート調査によると、ダイエット経験があると回答した人は9割以上にのぼりました。ダイエット自体は珍しいものではなく、多くの人が一度は挑戦したことがあると言えるでしょう。しかし、その内訳を見てみると、日常的に運動をしていない人が約6割を占めており、運動によって痩せようとする人は決して多くありません。

つまり、多くの人が「動いて消費する」のではなく、「食べないことで減らす」方法を選んでいるのです。さらに具体的な内容としては、マイクロダイエットのように通常の食事を完全栄養食に置き換える方法や、お菓子だけで一日を過ごすといった、栄養バランスを大きく欠いた食事制限も見られました。これらは短期間で体重が減る可能性はあるものの、身体に大きな負担をかける「危ないダイエット」と言えます。

ダイエットの本質とは何か

そもそもダイエットとは、「エネルギーの消費量が摂取量を上回る状態をつくること」を意味します。重要なのは、その差をどのように生み出すか、そしてどの程度のレベルで行うかという点です。

私たちの体が一日に消費するエネルギーは、主に三つの要素から成り立っています。一つ目は生命維持に必要なエネルギーである「基礎代謝」、二つ目は食事をすることで発生する熱量である「DIT(食事誘発性熱産生)」、三つ目は歩行や家事、運動などによる「生活活動代謝」です。

若い女性の場合、基礎代謝だけで一日におよそ1,000〜1,200kcalを消費するとされています。日常生活や活動量を含めると、1日の総消費エネルギーは約2,000kcal程度が望ましいと考えられています。

健康的なダイエットの具体例

仮に「今より1日のエネルギー消費量を500kcal増やしたい」と考えた場合、最も理想的なのは、運動を取り入れて消費量そのものを高める方法です。筋トレや適度な運動を行うことで筋肉量が増えれば、基礎代謝が上がり、何もしなくても消費されるエネルギーが増えていきます。

また、十分なタンパク質を摂取することでDITが高まり、運動と組み合わせることで活動代謝も向上します。その結果、1日の消費エネルギーが2,300kcal程度まで増え、食事面では無理のない範囲で200kcalほど減らす、といった調整が可能になります。ここで大切なのは、あくまでも栄養バランスの取れた食事を前提とすることです。

体脂肪1kgはおよそ7,000kcalに相当すると言われています。この理論でいけば、1か月で約2kgの減量が見込めます。筋肉を維持・増加させながら体脂肪を減らせるため、体力が落ちにくく、引き締まったメリハリのある体型を目指すことができます。

運動をしない食事制限がもたらす悪循環

一方で、運動を全く行わず、500kcal分をすべて食事制限で削ろうとする方法はどうでしょうか。短期的には体重が減りやすく、簡単に成果が出たように感じるかもしれません。しかし、この状態が続くと、体は「栄養が入ってこない環境」に適応しようとします。これがいわゆる「飢餓適応」です。

飢餓適応が起こると、体はエネルギーを節約するために代謝を落とし、できるだけ動かない省エネモードに入ります。その結果、以前と同じ食事量でも痩せにくくなってしまいます。多くの人はここでダイエットを諦め、元の食生活に戻ります。その際、筋肉は減ったままの状態であるため、増えるのは脂肪と水分が中心となり、リバウンドが起こります。

再び食事制限を行えば一時的に体重は落ちますが、また同じ壁にぶつかり、リバウンドを繰り返すことになります。このサイクルを続けることで、体からは筋肉だけがどんどん失われ、基礎代謝の低い、痩せにくい体質へと変わってしまうのです。

心の健康まで脅かすリスク

さらに深刻なのは、痩せなくなっても諦めず、食事量をさらに減らしてしまうケースです。「食べているから痩せないのではないか」と考えるあまり、食事そのものに罪悪感を抱くようになり、次第に食べることが怖くなってしまいます。こうした状態は、摂食障害につながるリスクを高めます。

摂食障害は単なる食生活の問題ではなく、精神疾患の一つとして扱われることが多く、回復には長い時間と専門的な支援が必要になる場合もあります。安易な食事制限が、心と体の両方を深く傷つけてしまう可能性があることを、決して軽視してはいけません。

正しいダイエットとは「生活を整えること」

健康的なダイエットに近道はありません。重要なのは、自分の生活リズムや性格に合った形で、無理なく続けられる習慣をつくることです。日常の活動量を少しずつ増やしたり、楽しめる運動を見つけたりする「生活習慣ダイエット」が、その一つの答えと言えるでしょう。

食事についても、極端に制限するのではなく、「美味しく食べながら量を適量にする」意識が大切です。制限すればするほど、その反動は大きくなり、いずれリバウンドという形で戻ってきます。そうではなく、自然に続けられる食事と運動のバランスを身につけることこそが、長期的に健康でいられるダイエットの本質なのです。

痩せることはゴールではなく、その先の人生を快適に過ごすための手段です。体を追い込むのではなく、いたわりながら整えていく。その視点を忘れずに、自分にとって本当に良いダイエットを選んでいきましょう。