食事
──認知行動療法が示す3つの大切な視点──
神経性過食症(過食症)は、食事に関する問題だけでなく、心理的・社会的要因が複雑に絡み合って生じる疾患です。そのため、過食という行動を「医師の力だけで止めること」は現実的ではありません。では、どこから治療の糸口を見つけ、悪循環を断ち切ることができるのでしょうか。
本記事では、神経性過食症の治療として効果が認められている認知行動療法(CBT)の考え方をもとに、「回復のために特に重要とされる3つのポイント」について丁寧に紹介します。
① 体型・体重への過度なとらわれを見直す

最初に取り組むべき課題は、「体重や体型への過剰なこだわり」を和らげることです。現代社会では、痩せていることが美しいとする風潮が強く、それが知らず知らずのうちに私たちの価値観に深く入り込んでいます。神経性過食症の方は、この影響を特に強く受けやすく、日常生活の中で「体重」「体型」「食事」に関する思考が非常に大きな割合を占める傾向があります。
まずは、ご自身の頭の中でこれらの要素がどれほどの割合を占めているか、静かに振り返ってみてください。
健康な人の思考と比較すると、神経性過食症や拒食症の方は、思考の多くが体重・体型・食事に集中しており、その他の大切な価値観が置き去りにされてしまっていることがあります。
ここで、一度未来を想像してみてください。
五年後、十年後、三十年後も、今と同じように体型や体重に人生の大部分を支配されていたいと思うでしょうか。
もし「違う」と感じられたなら、それが価値観を見直す大切なサインです。体型や体重が占める比重が大きすぎると気付いた時点から、少しずつ他の物事にも目を向け、自分の人生をより豊かにする新しい価値基準を育てていきましょう。これこそが、過食という悪循環から抜け出すための確かな第一歩になります。
② 規則正しく食べて「飢餓状態」をつくらない

悪循環を断ち切る二つ目の柱は、飢餓状態を避けるための安定した食事リズムの確立です。
過食は「強い空腹」から生じることも多く、十分に食べていない状態が続くと、心も身体も過食しやすいサイクルに陥ってしまいます。
認知行動療法では、次のような具体的な食事の指針が示されています。
「体重を増やさないように少なく食べる」ことは、長期的には必ず過食を招きます。自分を責める必要はありません。身体が生きるために当然の反応をしているだけなのです。
だからこそ、心身が飢えない食事リズムを整えることは、過食症治療にとって欠かせない基盤となります。
③ ストレスに対処する新しい方法を身につける

三つ目のポイントは、過食の引き金となるストレスへの対処法を増やすことです。
過食は「嫌な気分」や「強い不安」「孤独感」「緊張」などを一時的に紛らわせるための行動になっていることがあります。そのため、食べる以外の方法で気分を整えるスキルを身につけることが非常に重要です。
例として、以下のようなストレス対処方法があります。
また、過食症になりやすい方には、
もし対人関係や生活上の問題が大きく影響している場合は、それらに向き合うサポートが必要になります。過食衝動に対しては薬物療法が併用されることもありますが、根本的な回復には、食行動の修正・対人スキルの向上・ストレス対処スキルの習得など、本人の生活環境に合わせた包括的な支援が不可欠です。

今回は、神経性過食症の悪循環を断ち切るための3つのポイントをご紹介しました。しかし、ここまで読まれた方なら分かるように、「頭で理解していること」と「実際に行動すること」の間には大きな隔たりがあります。これはあなたの努力が足りないからではありません。神経性過食症は、意志だけで克服できる病気ではなく、専門的な支援を必要とする疾患です。
どうか自分を責めないでください。
治療は、ひとりで進めるものではありません。医師や心理士、家族、周囲のサポートを受けながら、少しずつ回復へ向かえば良いのです。あなたのペースで大丈夫です。
回復への道のりは決して短くはありませんが、確かな道筋があります。
あなたが自分らしい人生を取り戻せるよう、この記事がその手がかりとなれば幸いです。