心を強くする食事術 ~メンタルを強くする(弱くする)食べ物とは?

食事


心の不調は「食事」で変わる——現代人が見落としがちな“栄養の力”とは

近年は大きな感染症の流行もあり、私たちの生活様式は大きく変化しました。その結果、「眠れない日が続く」「何をするにも体がだるい」「理由もなく不安になる」といった、心身の不調を訴える人が増えています。実際、日本ではうつ病を含む気分障害の患者数が増加傾向にあり、2014年には100万人を超えたという報告もあります。薬物療法が一般的に行われているものの、患者数が減らない背景には、一つの大きな理由が隠れていると言われています。それが**“質的栄養失調”**です。

質的栄養失調とは、食べる量は足りていても、肝心の栄養素が不足している状態のことを指します。飽食の時代といわれる現代では、手頃な価格でお腹を満たすことはできますが、その内容は糖質に偏りがちで、タンパク質や良質な脂質、ビタミン・ミネラルが不足してしまう傾向があります。心の安定に必要な栄養が不足すれば、当然ながら気分の乱れや倦怠感、意欲の低下といった不調が起こりやすくなるのです。

中でも特に重要なのがタンパク質と鉄です。うつ症状のある人の多くがタンパク質不足に陥っているといわれ、月経のある女性を中心に鉄不足も深刻です。ここでは、心を元気に保つために欠かせないタンパク質と鉄の役割、そして上手な摂り方について詳しく解説します。


心の土台をつくる「タンパク質」

タンパク質は筋肉や皮膚など体の材料となるだけでなく、ホルモンや血液、臓器など生命活動のあらゆる機能の基盤となる栄養素です。特に心の安定に欠かせない「セロトニン」や「ドーパミン」といった神経伝達物質は、タンパク質を材料にして作られています。そのため、タンパク質が不足すると心の栄養が不足し、精神的な不安定さが生じやすくなってしまいます。

大人は毎日200〜300gものタンパク質が分解されているため、そのうち50〜70g程度は食事で補う必要があります。目安としては「体重1kgあたり1g」が適量とされ、最終的には1日100g程度の摂取を目指すと理想的です。

またタンパク質には「質の良し悪し」があります。プロテインスコアと呼ばれる指標があり、値が100に近いほど良質とされています。例えば卵はスコア100、豚肉は90、鶏肉は85、牛肉は79となっており、卵と肉類が非常に優秀です。

卵はビタミンやミネラルも豊富な完全栄養食品で、毎日3個程度食べることで効率的にタンパク質を補えます。肉類も各々に特徴があり、豚肉はビタミンB群が豊富で疲労回復に役立ち、鶏肉は消化が良く、牛肉は鉄分が豊富です。1日200g程度の肉と卵3個を目安にすると、無理なく質の高いタンパク質を摂取できます。食事で十分に摂れない場合は、プロテインを活用するのもよい方法です。


酸素を運ぶ“生命の中心”である「鉄」

鉄は体内で合成できないミネラルの一つで、血液を通して酸素を全身に届ける役割を担っています。鉄が不足すると酸素が十分に行き渡らず、細胞は酸欠状態になってしまいます。これが「鉄欠乏性貧血」です。

鉄不足になると、動悸、息切れ、めまいといった身体症状だけでなく、集中力の低下、意欲減退、不眠、さらにはうつやパニック障害などのメンタル不調にもつながります。

日本人の鉄摂取量は1950年頃と比べると約6分の1に減っていると言われ、その背景には加工食品の増加や偏った食生活、無理なダイエットなどがあります。鉄には「吸収されやすいヘム鉄」と「吸収されにくい非ヘム鉄」があり、効率よく摂るにはヘム鉄が含まれる食品が適しています。

ヘム鉄が豊富な食材

  • アサリ・シジミ
  • レバー
  • 牛肉

特にアサリの水煮缶は手軽で取り入れやすいアイテムです。牛肉はタンパク質も同時に摂れるため、心身のケアには非常に効率的です。鉄不足が気になる人は鉄サプリを利用するのも良い方法で、中でも吸収性に優れ胃腸への負担が少ない「キレート鉄」がおすすめです。


栄養の吸収を高める“3つの補助栄養素”

タンパク質と鉄をしっかりと働かせるためには、以下の栄養素を併せて摂ることが大切です。

  • ビタミンC(キウイ、ブロッコリーなど)
    鉄の吸収を助け、ストレスホルモンの調整にも関与。
  • ビタミンB6(ニンニク、玉ねぎなど)
    タンパク質の利用を助け、神経伝達物質の生成に関わる。
  • マグネシウム(わかめ、ナッツ類)
    タンパク質合成を支え、不眠や片頭痛の予防にも効果的。

心をむしばむ“精製糖質”と“トランス脂肪酸”

現代人の栄養不足を生み出す最大の要因が、糖質中心の食生活です。特に精製された白米、小麦粉、砂糖は血糖値を急上昇させ、その調整のためにタンパク質・ビタミン・ミネラルを大量に消費してしまいます。これを繰り返すことで、心を安定させるホルモンが作られにくくなり、精神の不調が起こりやすくなります。

さらに注意したいのが「トランス脂肪酸」です。マーガリンやショートニング、揚げ物の加工過程で生じる油で、細胞膜を弱め、心血管疾患やアレルギーを引き起こす可能性が指摘されています。欧米では規制されていますが、日本では多くの食品に含まれています。スナック菓子、ドーナツ、クッキーなどは特に注意が必要です。

一方で、サンマやイワシに多いオメガ3脂肪酸は脳の働きを助け、うつ症状の予防にもなるため、積極的に摂りたい油です。


まとめ——心を守るのは、毎日の「食習慣」

心と体の健康は、特別な治療や難しいケアだけでなく、日々の食事から大きく改善できます。

  • 良質なタンパク質を十分に摂る
  • ヘム鉄を意識し、必要に応じてサプリも活用
  • 栄養の吸収を助けるビタミン類を組み合わせる
  • 精製糖質とトランス脂肪酸を避ける
  • オメガ3脂肪酸を積極的に取り入れる

こうした小さな積み重ねが、心の安定を取り戻し、毎日の生活を軽やかにしてくれます。心の不調に悩んでいる方は、まずは今日の食事を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。