食事
「突然、頭をバットで殴られたような激しい痛みが走った」
「これまでの人生で経験したことのない耐え難い頭痛に襲われた」
このような症状が現れた場合、真っ先に疑うべき病気がくも膜下出血です。くも膜下出血は脳卒中の中でも特に重篤で、発症すると命に関わる可能性が非常に高い疾患として知られています。実際に、発症後およそ3分の1の人が急性期のうちに亡くなり、生存できた場合でも約3分の1の人に後遺症が残るとされています。元の生活に戻り、社会復帰が可能となるのは全体の約3分の1に過ぎません。
このように非常に危険なくも膜下出血ですが、多くの人が「突然起こる防ぎようのない病気」と考えがちです。しかし実際には、長年の生活習慣の積み重ねが発症リスクを高めているケースが少なくないことが分かっています。特に、日々の食生活や飲酒、喫煙習慣は、くも膜下出血と深い関係があります。
脳は頭蓋骨の中で、「硬膜」「くも膜」「軟膜」という三層の膜に包まれています。このうち、くも膜と軟膜の間に出血が起こる状態をくも膜下出血といいます。出血によって脳全体が急激な刺激を受け、激しい頭痛や意識障害が突然出現することが特徴です。
血管の中を流れる血液は、脳へ酸素や栄養を届ける重要な役割を担っています。しかし、糖質や脂質を過剰に摂取する食生活が長期間続くと、それらが体内で変性し、血管の内側に付着します。その結果、血管に慢性的な炎症が起こり、血管の一部が硬くなってしまいます。これが動脈硬化です。

動脈硬化が進行すると血管の内腔が狭くなり、血液がスムーズに流れなくなります。そのため、血液を全身へ送り出すために強い圧力が必要となり、血圧が上昇します。高血圧の状態が続くことで、血管への負担はさらに大きくなります。
さらに、動脈硬化が進むと、血管の中に硬い部分と柔らかい部分が混在するようになります。血流や血圧に差が生じることで、柔らかい血管壁が徐々に引き伸ばされ、こぶのように膨らんでいきます。この状態が動脈瘤です。

脳にできた動脈瘤は「脳動脈瘤」と呼ばれ、これが破裂することでくも膜下出血が発症します。くも膜下出血の原因の約80%は脳動脈瘤の破裂とされており、その多くは後天的に形成されます。一方で、生まれつき血管の構造に弱さを持つ先天的な動脈瘤も存在します。また、交通事故などの外傷や、脳動静脈奇形が原因となる場合もあります。
くも膜下出血の症状は、前触れなく突然現れることが特徴です。代表的な症状としては、激しい頭痛、意識がもうろうとする、意識消失、嘔吐、けいれん、視覚障害、感覚異常、手足の運動麻痺などが挙げられます。特に「人生で最も激しい頭痛」と表現されるほどの痛みは、非常に重要な危険信号です。

発症後は一刻を争う状態となり、迅速な治療が行われなければ命に直結します。たとえ命が助かった場合でも、言語障害、記憶障害、運動障害などの後遺症が残ることがあり、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼします。
動脈硬化や高血圧を進める食生活は、くも膜下出血のリスクを確実に高めます。特に注意すべきなのは、脂分の多い食品、糖化しやすい食品、塩分の多い食品です。

具体的には、フライドポテト、唐揚げ、天ぷら、カップ麺、ドーナツ、生クリーム、漬物などが挙げられます。成人が1日に摂取する脂質の目安は40〜60gとされていますが、Mサイズのフライドポテトには約20g、カップ麺には15〜20gもの脂質が含まれています。これらの食品は塩分も多く、高血圧を助長する原因となります。
さらに、揚げ物は調理過程で焦げが生じやすく、この焦げに含まれる物質も動脈硬化を進める要因となります。こうした食事が日常的に続くことで、血管への負担は確実に蓄積されていきます。
過度な飲酒も動脈硬化を進め、くも膜下出血のリスクを高めます。一般的に、1週間に150g以上の純アルコール摂取は過剰とされます。毎日のように多量の飲酒を続けることは、血管に慢性的なダメージを与え続けることになります。

お酒の種類によって含まれる純アルコール量は異なり、ビール500mlで純アルコール20g、日本酒1合で22g、焼酎1合で36gほどです。
たとえば、毎日缶ビール350mlを飲んだ場合は1週間で純アルコール約100gとなりますのでそこまでリスクにはなりません。それに対して、焼酎の場合は週5日以上飲んでしまうとリスクになりえます。
また、喫煙は非常に強い危険因子です。喫煙者は非喫煙者と比較して、男性で約3.6倍、女性で約2.7倍もくも膜下出血のリスクが高いと報告されています。喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を加速させるだけでなく、心疾患やがんなど多くの重大な病気の原因にもなります。

くも膜下出血の予防には、脂質や糖質、アルコールの摂取量を見直し、減塩を意識した食生活を心がけることが重要です。食物繊維を多く含む野菜、海藻、果物を積極的に摂ることで、動脈硬化の予防につながります。また、低脂肪乳を飲む習慣がある人は、発症リスクが低い傾向にあるとも報告されています。

くも膜下出血は、発症してからでは取り返しがつかない病気です。だからこそ、日々の食事や生活習慣を見直し、発症を未然に防ぐことが何より重要です。もし突然、激しい頭痛などの症状が現れた場合は、決して我慢せず、迷わず救急車を呼び、速やかに医療機関を受診しましょう。