職場で気づかれるうつ病・適応障害の10のサイン

メンタルヘルス

近年、働く人の心の健康は、企業や社会全体にとって重要なテーマとなっています。成果や効率が重視される一方で、職場での人間関係、業務量の増加、長時間労働など、精神的な負担は年々大きくなっています。その影響を受け、心の不調を理由に休職する人は決して少なくありません。

傷病手当金申請に記載された病名内訳によると、2021年時点では精神疾患が全体の33%を占め、休職理由として最も多い病気となっています。その精神疾患の多くが、うつ病と適応障害です。
2位以降は、がんが14%、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症が10%、けがが9%、心臓病などの循環器系疾患が8%と続いています。

2022年は新型コロナウイルス感染症の影響により、感染症が病気休職者の内訳の50%を占め1位となりましたが、それでも精神疾患は20%で2位となっています。このことからも、精神的な不調は一時的な社会状況に左右されにくく、恒常的に多くの人が直面している問題であることが分かります。

うつ病と適応障害とはどのような病気か

まず、うつ病とは、発病の原因がはっきりしているかどうかに関わらず、気分の落ち込み、不安感、意欲の低下、興味や喜びを感じられない状態などが2週間以上持続する精神疾患です。単なる気分の浮き沈みとは異なり、脳の働きそのものが低下している状態であり、本人の努力や根性だけで改善することはできません。

一方、適応障害は、職場でのハラスメント、過重労働、配置転換、人間関係の悪化など、明確なストレス要因が引き金となり、心身のバランスを崩してしまう病気です。原因となる環境から離れることで症状が軽減する場合がある点が特徴とされています。

ただし、ストレスが原因であっても、症状が重く医学的な診断基準を満たす場合には、適応障害ではなくうつ病と診断されることがあります。適応障害は「うつ病と診断されるほどではないが、ストレスによって生じた抑うつ状態」と理解するとよいでしょう。

どちらの病気にも共通しているのは、心身のエネルギーを長期間にわたり消耗し続けている状態であるという点です。「少し疲れているだけ」「誰でもつらい時期はある」と軽く考えてしまい、休養や相談といった対策を取らずにいると、知らないうちに発病してしまいます。これらは突然起こる病気ではなく、無理を重ねた結果として静かに進行していくのです。

職場で現れやすい10のサイン

うつ病や適応障害は、初期段階では本人も自覚しにくく、周囲からも見逃されがちです。しかし、注意深く観察すると、日常の行動や態度に小さな変化が現れます。

① 遅刻や欠勤が増える
十分な睡眠を取っているにもかかわらず疲労感が抜けず、朝起き上がれなくなります。体調不良を理由に遅刻や欠勤が増える場合は、心の不調が背景にある可能性があります。

② 仕事のミスが目立つ
集中力や記憶力が低下し、簡単な作業でもミスをしてしまいます。本人は「なぜできないのか」と自分を責め、さらに状態を悪化させることもあります。

③ 怠けているように見える
仕事への意欲や関心が低下し、手が止まってしまうことがあります。周囲から誤解されやすく、孤立を深めてしまいます。

④ 表情の変化
表情が険しくなったり、感情の起伏が乏しくなり無表情になることがあります。嫌なことがあれば誰しも表情が変わるのは当たり前ですが、2週間以上続く場合は注意が必要です。

⑤ イライラしやすくなる
抑うつ状態でも、元気がないとは限りません。無理を重ねることで感情のコントロールが難しくなり、怒りっぽくなる人もいます。

⑥ 落ち着きがなくなる
強い不安感から、じっと座っていられず頻繁に席を立つようになります。自律神経の乱れによる身体症状(喉の乾きや頻尿など)を伴うこともあります。

⑦ 会話が減る
人との関わりが負担になり、会話や雑談を避けるようになります。周囲からは「静かになった」と見られがちです。

⑧ ネガティブな発言が増える
自責感や無価値感が強まり、「自分は役に立たない」「迷惑をかけている」といった言葉が増えます。

⑨ お酒やタバコが増える
一時的に気分を和らげるため、飲酒量や喫煙量が増えることがあります。甘いものを過剰に摂取する人もいます。

⑩ 痩せていく
食欲が低下し、体重が減少します。内科的な検査で異常が見つからない場合、心の不調が原因であることも少なくありません。

まとめ――職場で求められる「気づき」と「支え合い」

うつ病や適応障害の症状は人それぞれで、必ずしも分かりやすい形で現れるとは限りません。そのため、「根気がない」「怠けている」「だらしがない」と誤解されやすいのが現実です。
競争や効率が優先される職場環境の中で、真面目で責任感の強い人ほど限界まで頑張ってしまい、自ら助けを求めることができなくなります。

だからこそ、職場全体で支え合う意識を持つことが重要です。日頃から小さな変化に目を向け、声をかけ合うことで、深刻な状態に陥る前に対応できる可能性があります。
もし自分自身や周囲の人に不調のサインを感じた場合は、産業医やカウンセラーへの相談を検討してみましょう。精神科の受診に抵抗がある場合でも、まずは話を聞いてもらうことが、回復への第一歩となります。