食事
朝のひと口が変える“炎症レベル”——慢性炎症を抑えるための朝食の選び方
私たちが何気なく口にする朝の食事。そのひと口が、実は体の「炎症レベル」に大きな影響を及ぼすことをご存じでしょうか。近年、医学・栄養学の分野では“慢性炎症”が多くの病気に関わる重大な要因として注目されるようになってきました。炎症と聞くと、怪我をしたときに腫れる、熱が出るといった急性の反応を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、もっと静かで、自覚のないまま進んでいく“見えない炎症”こそが、私たちの健康を脅かしているのです。
この慢性炎症は“サイレントキラー(静かな殺し屋)”とも呼ばれ、糖尿病、動脈硬化、心臓病、認知症、がん、うつ症状など実に多くの疾患と関連していることが報告されています。特に厄介なのは、自覚症状がほとんどないまま進行し、気付いたときには健康リスクが大きく高まっているという点です。しかし同時に、日々の生活、とりわけ“食事の取り方しだいで予防できる”という点に希望があります。
■ 体内時計と炎症の関係——朝が要になる理由

私たちの体には、外界の明暗や行動に合わせてさまざまな機能が変動する「サーカディアンリズム(概日リズム)」が備わっています。実は炎症反応や免疫の働きも時間帯によって変化し、とくに朝はコルチゾールが高く、炎症性サイトカインが活性化しやすいとされています。
つまり、「朝に何を食べるか」は、その日の炎症レベルを大きく左右するということです。血糖値の急上昇、腸内環境の乱れ、油脂バランスの偏りなど、朝食に潜む小さな習慣が炎症のスイッチを入れるきっかけとなり得るのです。

まずは、できれば朝には控えたい食べ物を整理しておきましょう。
① グルテン(小麦製品)
パンやパスタ、うどん、菓子類に含まれるグルテンは、腸のバリア機能を弱め、リーキーガット(腸漏れ)を引き起こし炎症につながる可能性が指摘されています。
すべての人に害があるわけではありませんが、便秘や下痢、慢性的なだるさ、集中力低下を感じる人は、朝だけでもグルテンを控えると変化が見られることがあります。
② 砂糖・ブドウ糖果糖液糖
甘いパンやジュース、清涼飲料水に多く含まれる糖質は、AGEs(終末糖化産物)という“細胞の焦げつき”を増やし、全身の炎症を促進します。さらに血糖値の急変動は体のストレスとなり、午前中の集中力低下や疲労感にもつながります。
③ 植物油・種子油(オメガ6脂肪酸の過剰)
サラダ油やコーン油、大豆油などに多いオメガ6脂肪酸は、取りすぎると炎症物質の生成を促進します。現代の食生活では、とにかく過剰になりやすいのが問題。加工食品やお惣菜をよく食べる人は特に注意が必要です。
これらを“完全にやめる”必要はありませんが、朝だけでも控えることで炎症リスクを下げることができます。

次に、朝に取り入れることで炎症を和らげ、体調を整えてくれる食材を紹介します。
① 青魚(DHA・EPA)
サバ、サンマ、イワシなどの青魚に豊富なオメガ3脂肪酸は、炎症をしずめる働きがあり、心血管疾患や関節症状の改善にも役立つといわれています。焼き魚が難しければ、缶詰や刺身を利用するだけでも十分効果的です。
② ダークチョコレート(カカオ70%以上)
高カカオチョコレートに含まれるフラバノールという成分は強力な抗酸化作用を持ち、慢性炎症の改善に役立ちます。ミルクチョコでは逆効果になるため、カカオ含有量70%以上のものを、朝に数かけらほど取り入れるのがおすすめです。
③ キノコ類(β-グルカン)
しいたけ、しめじ、まいたけ、エノキなどのキノコ類には、β-グルカンという免疫調整作用のある成分が多く含まれ、炎症性サイトカインの過剰生成を抑える働きが報告されています。味噌汁に入れるだけでも簡単に取り入れられ、腸内環境を整える食物繊維も豊富です。
■ 今日からできる、炎症を抑える朝の習慣

慢性炎症は、自覚のないまま進んでいきます。しかし、毎日の小さな選択の積み重ねで、確実に抑えることができます。難しいことは必要ありません。
こうした小さな工夫が、数年後の自分の体を大きく変えてくれます。
炎症は決して特別な人だけに起こるものではありません。日々のストレス、食事、生活習慣の積み重ねで、誰の体にもじわじわと進行していきます。しかし同時に、炎症は「食べ方」で守ることができるものでもあります。
とくに朝のひと口は、体のリズムと深い関わりがあるため、意識を少し変えるだけで炎症のスイッチをオフにすることができます。
“今日の朝食が、未来の健康をつくる”
その意識をもって、ぜひできるところから始めてみてください。