メンタルヘルス
私たちは普段、「食事は体のためのもの」と考えがちです。
カロリーや栄養バランス、体重管理や生活習慣病の予防など、どうしても“身体面”に意識が向きます。
しかし近年、心理学や脳科学、栄養学の分野では
「食事は心の状態にも深く関わっている」ことが明らかになってきました。
落ち込みやすさ、不安感、イライラ、やる気の低下――
これらは性格や気合いの問題ではなく、日々の食習慣が影響している可能性があるのです。
本記事では、「なぜ食が心に影響するのか」という仕組みから、具体的に意識したい食材、避けたい習慣、そして今日から始められる実践方法までを、わかりやすく解説していきます。

「食事って、体に良いか悪いかの話じゃないの?」
そう感じる方も多いかもしれません。
しかし、私たちの感情や思考、意欲をコントロールしているのは、脳内で働く神経伝達物質です。
代表的なものに、セロトニンやドーパミンなどがあります。
実はこれらの神経伝達物質の多くは、脳だけで作られているわけではありません。
近年の研究で、その大部分が腸と深く関わっていることが分かってきました。
腸内環境が乱れると、神経伝達物質の働きにも影響が及び、
結果として気分の不安定さやストレス耐性の低下につながるのです。
つまり、食事は単に「栄養を摂る行為」ではなく、心の土台を整える行為でもあると言えるでしょう。

メンタルヘルスを語るうえで欠かせない物質が、「セロトニン」です。
セロトニンは“幸せホルモン”とも呼ばれ、
感情の安定やストレスへの耐性、安心感をもたらす役割を担っています。
このセロトニンを体内で作るために必要なのが、「トリプトファン」という必須アミノ酸です。
トリプトファンは体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。
トリプトファンを多く含む食品には、以下のようなものがあります。
特に朝食でこれらを摂ることは重要です。
朝にトリプトファンを摂取し、日光を浴びることで、
日中のセロトニン分泌が促され、心が安定しやすくなります。
さらに、セロトニンの合成にはビタミンB6も欠かせません。
玄米、マグロ、にんにくなどを意識して取り入れると、より効果的です。

近年、「腸は第二の脳」と呼ばれるほど、腸と心の関係が注目されています。
腸内には数百兆個もの腸内細菌が存在し、
そのバランスが私たちの気分や行動、ストレス反応に影響を与えています。
腸内環境が乱れると、うつ病や不安障害のリスクが高まるという研究報告もあります。
逆に、腸内細菌の状態が良好な人ほど、気分が安定しやすい傾向が見られます。
腸内環境を整えるために意識したい食品は以下の通りです。
腸が整うことで、脳の働きも安定し、心も自然と落ち着いていきます。

メンタルの不調と深く関わるのが、血糖値の乱高下です。
甘いものを食べた直後に元気になり、その後どっと疲れが出る――
そんな経験はありませんか?
これは、血糖値が急上昇・急降下する「ジェットコースター血糖」と呼ばれる状態です。
この状態が続くと、イライラや不安感、集中力の低下が起こりやすくなります。
対策としておすすめなのが、GI値の低い食品を選ぶことです。
白米より玄米、白いパンより全粒粉パンを選ぶなど
小さな工夫で血糖値は安定しやすくなります。
血糖値が安定すると、心も穏やかになりやすいのです。

心の健康を考えるうえで、避けたい食習慣もあります。
1つ目は、加工食品やファストフード中心の食生活です
栄養が偏りやすく、腸内環境の乱れにつながります。
2つ目は、糖分の過剰摂取
スナック菓子や清涼飲料水は、血糖値を不安定にします。
3つ目は、カフェインの摂りすぎ
覚醒作用がある一方で、不安感や不眠を招くことがあります。
4つ目は、食事を抜く習慣です
特に朝食を抜くと、セロトニンが不足しやすくなります。

オーストラリアで2017年に行われた研究では、
軽度のうつ症状がある人に地中海食を中心とした栄養指導を行った結果、
12週間後に症状が大幅に改善しました。
また、イギリスの2021年の研究では、
食物繊維の摂取量が多い人ほど、不安や抑うつのスコアが低いことが示されています。
これらの結果は、腸内環境とメンタルの密接な関係を裏付けています。

最後に、今日から実践できるポイントを紹介します。
完璧を目指す必要はありません。
少しずつ食事を整えることが、心を守る第一歩になります。
心が疲れていると感じたときこそ、「何を食べているか」に目を向けてみてください。
あなたの心は、毎日の食事から支えられています。